テンペラ
テンペラ
Haruna Horiguchi
テンペラ画について
テンペラ技法とは、主に12~15世紀のイタリアで宗教画に用いられた絵画技法です。この技法は、特に14世紀頃に脚光を浴び、のちに油彩画に移り変わるまではフレスコと並んで絵画の中心的存在でした。テンペラ技法には複数の種類がありますが、中でも経年変化しにくく明るい色調が特徴の卵黄テンペラは代表的存在です。
私が用いているのも、卵黄テンペラ技法です。板の上に石膏膠水溶液で地塗りを施し、 レリーフなどの装飾を加え、その上に金箔を置き卵黄テンペラ絵具で彩色しています。
黄金背景テンペラ画の大まかな制作工程
・下地作り
板にウサギ膠を塗り、麻布を張り込み、石膏膠液を10層程度塗り重ね、金属の板で削ります。
・金箔押し
砥粉(とのこ)を塗り重ね、水をたっぷり塗り、金箔を押します。
乾燥後、濡れタオルを乗せて湿気を入れたあと表面を乾かし、メノウ棒で金箔を磨きます。
少し先の尖ったメノウ棒で模様を刻印をします。砥粉と金箔がはみ出ている部分をヤスリで削ります。
・絵具での描写
卵黄テンペラ技法で用いる絵具は、卵黄と酢と顔料を練り合わせて作ります。
箔押しの工程が全て終わってから絵具で描いていきます。
詳しい制作工程
修士の研究でフラ・アンジェリコ作「リナイウォーリ祭壇画」の部分模写をしたときの写真を使って解説します。
↓クリックで拡大&解説が出ます
シナ合板にヤスリがけをし、濡れたウエスでよく拭きます。前膠(ヤニ止め、滲み止めの役割)として湯煎で温めたウサギ膠を刷毛で塗布します。
ウサギ膠を刷毛で塗布しながら麻布を張り込む。
石膏膠液を10層塗布する。塗り重ねる際、表面が乾いていて中が湿っているくらいの時に行なう。(この作業は丸一日かかります。根気がいります。)
鉛筆の粉を全体にまぶし、削った部分がわかるようにしておく。金属の板で表面が平滑になるよう削る。鉛筆の粉がなくなり、真っ白で平滑になったら、ヤスリで表面を整える。粉は飛ぶ、鼻はムズムズする、手は痛くなる、という辛〜い作業です。
輪郭を転写し、先の尖ったペンで石膏地を削って輪郭線を刻む。この線は、金箔を押した後、余分な金箔を削り取るときに必要になります。
ウサギ膠に砥粉を溶いたものを5回塗布します。 溜まりができないように気をつけて行ないます。
水をたっぷり塗り、箔刷毛を使って箔を置いていく。
石膏地に湿気を入れた後、メノウ棒を使って金箔の表面を磨く。
少し先の尖ったメノウ棒で線刻する。線の方向を変える事によって、角度を変えて見るとキラキラする。
刻印が終わったら、余分な箔と砥粉をヤスリで削る。
卵黄と酢を混ぜたものと顔料を滑らかになるまでよく練り合わせる。
下層の彩色が上層まで影響するので、地道にちまちまとしたハッチングで色だまりが出来ないように色を重ねていく。
絵具で描き終えた後、金箔で装飾する。
箔を置いたところ。乾燥後、柔らかい筆で余分な箔をはらう。
完成!